違う屋根の下

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「里桜は……お母さんが引き取りたいって言ってるけど、一応本人の気持ちも確認しておいて欲しいって」  ここにいた頃の私なら、「離婚なんてやだ!」って素直に訴えることもできたかもしれないけど。 「お父さんは、どうなの」  嫌な質問だろうなとも思ったけど、敢えて尋ねてみる。 「そりゃあ、里桜と暮らしたいさ。でも、オレのエゴだけで里桜を連れていくわけにはいかない。里桜にとっては、しっかりしてるお母さんと暮らした方がいいと思うし」  お父さんがもし泣いてすがるようなことがあったとしたら、私も悩んでしまうかもしれなかった。母性本能とはこういうことなのかわからないけど、お父さんには「ほっとけない」と思わせてしまうようなところがある。  離婚の原因なんて、私が聞いてもたぶん仕方がない。『オトナノジジョー』ってやつで、子どもの私にも言えることと言えないことがあるだろう。それに、二人がそれぞれ感じたことを私がすべて共感したり理解できる自信もない。だったら咎めることも止めることもしない方がいいように思え、それ以上私はなにも言わなかった。
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