違う屋根の下

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違う屋根の下

 部屋のドアをノックもせずに開けて、「里桜(りお)、朝ご飯。起きて」とドアの外から放り投げるように言って、大きな足音でリビングに戻っていく。その振る舞いも、面倒臭そうな声も、お母さんは普段通りだった。いつもと違っていたのは、私がもうすでに起きていたということだ。毎朝この儀式で目が覚めるのに、今日はお母さんが起きるのと変わらないくらいの時間にはぱっちりと目が開いていた。  実はあまりよく眠れていない。いつ眠りについたのかもわからない。眠たくなるまでそのまま起きていてもよかったんだけど、そんな気力もなくだらりとベッドに横になった。無理にでも目をつぶっていたらそのうち眠ってしまうだろうと思ったのに、頭の中でいろんなことがぐるぐると回り、かえって目が冴えてきてしまった。  目が慣れた暗闇の中で、天井の模様を追いかけたり、カーテンのひだを数えたりしながらやり過ごしているうち、気がつけば朝になっていた。お母さんが洗い物をする水の音が意識の中に飛び込んで来て、まぶたの筋肉が動くのをはっきりと認識した。とりあえずは眠れたらしい。
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