違う屋根の下

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 夕食は、団地にいた頃に通ったという中華料理屋に入ることになった。なにを食べていたか、そもそもお店自体もよく覚えていなかったけど、お父さんは懐かしいと何度も言って、チャーハンと餃子とエビチリを注文した。私はお父さんに勧められた中華丼を選んだ。水の入ったコップもテーブルも、あまり清潔とは言えないお店だった。こういうの、お父さんは平気だけど、お母さんはきっとダメだ。本当になにもかもが違いすぎる。お母さんも最初はたぶん、お父さんに寄り添おうと努力して頑張ったはずだ。お父さんも決してあぐらをかいていたわけじゃないとは思うけど、なにせ鈍感なのである。もう少し、お母さんの気持ちを理解してあげられたら良かったのに。 「もう、すぐにするの?」  離婚、という言葉を避けて、曖昧に質問をする。 「ああ、明日とかいうことじゃないけど。なるべく早く進めるってことで話がついたとこ。で、書類だけ先に準備した」 「……やっぱ、決定なんだ」  お母さんが、計画半ばで人に伝えるなんてことはしない。お父さんに切り出した時点でもう、その先々どうするかの目処がついていたんだろうし、お父さんもそれはわかっていただろうと思う。 「ごめんな。里桜には夫婦の問題に巻き込んでしまうことになって申し訳ないと思う。なるべく今まで通りの生活ができるようにするつもりだから」  だったら、このまま続ければいいのに。どうせ今までだって、お母さんの顔色を伺って生きてきたんだから。でも、結論が出てしまった二人を取り繕えるだけの力を、勇気を、私は持っていない。お父さんの味方につけるほど頑張り屋でもなく、お母さんを説得できるほど頭の回転も良くない。ただこうして、渦に巻かれて生きていくほかない無力な自分が悔やまれる。
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