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もう眠くはなかったけど、ものすごくだるい。それでも、えいやっと気合いを入れて大きく伸びをした。鏡の中の私はあまり顔色が良くなかったけど、誰も気がつかないだろう。パジャマのまま無言で食卓につくと、綺麗に焦げ目のついたトースト、カリカリに焼けたベーコンの添えられた目玉焼き、小さなサラダ、オレンジのヨーグルト和えといった、お母さん特製の規則正しい朝ご飯メニューがいつものように並んでいた。忙しいんだから、カット野菜を使えばいいのに絶対に買わないし、オレンジも丁寧に皮をむいて、無糖のヨーグルトとはちみつで和えてある。例えどんなに具合が悪い日でも、お母さんはまったく家事の手を抜かない。
「おはよう」
お父さんが食事の手を休めて、私のコーヒーを注いでくれる。
「……おはよ」
眠れなかったせいで、この量を完食できる自信がないけど、食べないとお母さんがうるさい。トーストを半分に折りお母さんが近くにいないのを見計らってお父さんのお皿に黙って移した。
「食べないのかよ」
「うん、あんまり食欲なくて。でもいらないって言ったらお母さん拗ねるし」
「しょうがねえなあ」
お父さんは、困った私が逃げる先。
「私にばっかり鬼の役を押しつけて。あなたは叱らなくていいから気楽でいいわね」
お母さんは事あるごとに嫌味を言う。それなら、お母さんももっと心にゆとりを持てばいいのにと思う。実際、お父さんにだってなんでも甘やかされているわけでもなく、ここぞという時にはしっかりと叱られているし、ストレスになるくらいならお母さんもそうしたらいいのに。
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