違う屋根の下

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 私はとっくに心の準備ができているつもりだった。なのに夕べ、離婚届の書類を作っているんだと理解した瞬間、驚くほどの悲愴感で満ちあふれた。なんで今更離婚なんてするの。怒り、寂しさ、いくつもの感情が入り交り、潜り込んだベッドの中で声を殺して泣いた。私は、諦めの日々の中でも、またいつか昔のような家族に戻ることをどこかで願っていたのかもしれない。 「……ふうん……」  そう強がってみたものの、声を出したら一瞬で涙がいっぱいになって、ボロボロとこぼれてきて、慌てて袖で拭った。 「相談もできなくて、ごめんな」  お父さんの顔を見たらもっと泣いちゃいそうで、私はずっと滑り台に視点を定めたままボトボトと落ちる涙で地面を濡らし続けた。  お母さんは完璧な人だ。決めたことをきっちりやり遂げたいタイプだし、先々の心配を抱えるのが嫌で、常に準備を整えたい人。逆にお父さんは楽観的で、自由で、あまり悩まない人。どうしてこんな真逆な人同士が結婚したんだろうって、いつも思っていた。 「……相談なんか、されてもさ」  ぐすっと鼻をすすって目をこする。私はお父さんが好きだ。でも、お父さんと二人だけで生活するのは想像ができなかった。改めて考えたら、なんだかんだ言って口うるさいお母さんがいるから我が家は成立していたんだろう。  それに、お母さんの気持ちも少しは理解できる。お父さんのように自由気ままに生きるのは楽しいけど、それだけじゃうまくいかないことだってある。自由なお父さんだからこそ余計にブレーキを掛けていたところもあるだろうし。
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