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「お前が私の供の者か。ずいぶん頼りないな。歳はいくつだ」
長身の男だ。顔もよく見えないほど伸びるがままの赤銅色の髪は肩のところで無造作に束ねてある。
肖像画で何度も見た二代目勇者の面影があるのかどうかもわからなかったが、髪は同じ色をしていた。
「は、はい。ランスロット・スチュワートと申します。歳は二十一です」
「私はどの勇者候補よりも先にアレにたどり着くつもりでいる。お前は私の役に立てるか? 私の力になる覚悟がないなら他の者を連れていくが」
「滅相もございません。このお役目の下、生まれ出でた時よりカイン・ハワード様のお役に立つために鍛錬を重ねてきました」
ここへ来て、勇者の旅の供ができないことほど恐ろしいことはない。ランスロットは早口で答えた。
「では、誓いを」
「はい。私はあなたと共にあることを誓います」
「ふむ。それと、二度と私の名を呼ぶなよ。呪いを被りでもしたらたまらんからな。お前のことはランドと呼ぶ」
「は、はい」
“ランド”は侍従の総称だ。きっと、誇り高きお方なのだろう。ランスロットは思った。
その厳しさは、勇者候補として意識の高さゆえだ。心構えが人並みではないのだ。この旅は決して生易しい旅ではない。
尊敬の念を込め、ランスロットは主人の前に跪き、深く頭を下げると剣を捧げた。
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