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いま、大魔王支配下の【仄かく暗き妖樹の森】に、勇者たちパーティー四人の雄叫びが木霊している。
それは勇者と武人の鬼気迫る大音声と、白と黒、ふたりの魔法使いの魔術詠唱のあやかし。
剣撃の閃きがあがるたび、醜く曲がった触手状の枝葉は折られ切り裂かれていき、魔術が煌めきの中から産み出されるたびに、鋭く尖った妖魔剣の梢は千切れ舞い散らせられて、大魔王の力の加護を受けた妖樹の森の強大力をもってしても、勇者たちの息もきらさぬ進軍をとどめることさえ敵わない。
やがて、北の空を覆っていた棘獣竜の化身。妖樹の加護を受けていた大鉈蔓が、泣き叫ぶような悲鳴をあげ、無惨にも皮をひき剥がされて、筋肉繊維ごと業火にの中でのたうつさまは、まさに地獄の釜茹に突き落とされたよう。
そして、青空からの刺すような光が、矢のように地面を照らし始めた。
『むう!?こ、これは!なんという…熱く激しい光圧…!!』
森の深部の、更に黄泉へと地下深く下った奥の奥。
この妖樹の森を自らの五体と成し、寄り来るもの総てを食べ尽くしていた魔侯十二柱の七柱目【チャウタベ】。
勇者たちパーティー四人がトドメに揃って手にしたのは、天帝の錫杖【パニシュ・イフェル】。
『グガ…アアアア…アア……!!』
慈悲に満ちた柔らかな、それでいて【魔】に対しては容赦の欠片もない猛烈な光が、幾つかの線から束になり、やがて広大な白光円柱に化け【チャウタベ】の断末魔とともに灰塵に帰した。
結果、100リーグ四方の濃緑魔境として恐れられた【仄か暗き妖樹の森】は、白い花咲く高原へと、その本来の姿を取り戻したのだ。
『勇者さん!やりました!』
『ああ、白やったな!』
『それもこれも、おれが泰山より発掘した【天帝の錫杖】のお陰だな!黒、お前もそう思うだろ?』
『もう、そんな憎まれ口ばかり、武人さんは早く大人になるべきなのです』
光の粒子がキラキラ舞う草原に立ち、勇者たち四人のパーティーはそれぞれ愉しげに勝利の会話を弾ませている。
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