13人が本棚に入れています
本棚に追加
初老の立派な髭を蓄えた大公爵は、幼くして即位せざるを得なくなった彼女の願いを叶えるために、私財を投げうち屈強な私兵を雇って一軍を成した。
たとえ敵わないまでも命を賭して、【仄かく暗き妖樹の森】に打ち入ろうと画策していたのだ。。
そして、この事実を察したお姫様は俺たちに涙ながらにこう言った。
『妾はな、ただ。…ただ、父たちの敵討ちがしたいわけではないのじゃ。ただ、あの【仄かく暗き妖樹の森】の向こう側には、百年以上前に閉じ込められた帝国領と、同盟諸王国群があったのじゃ。…い、いや、いまでもあるはずじゃ!』
どうか、皆。無事で生き残っていてほしい。。
彼女の、きつく固く結ばれた小さな両手の指の爪が、皮膚に食い込み血がにじむ。
この帝国の皇室は、向こう側が森で閉ざされてからというもの先祖代々わたる国是として、一人でもよいから生きている民を救いだすのを基本方針としており、そのため時の皇帝御自ら命を賭けて、幾度も幾度も国軍を指揮して【森】に挑み続け、なんども負け、そして散っていったそうだ。
北方領土と北方交易ルートを【森】の遮断により喪い、また度重なる解放戦役のお陰ですっかり国力が疲弊した帝国は、とかく維持するのにも費用がかかる国軍を、国境の守備と国内に出現する魔物退治にのみ専念させ、国民献金を生かして軍勢を催して攻撃していたらしい。
まあ、それもお姫様の父皇の代以来、途絶えて久しくないらしい。
部外者だし、帝国さんの政治でもあるし、幾らなんでも差し出がましいとは思ったが、それでも俺たちは一宿一飯(実際はなんやかんやと歓待されて10日間滞在)の御礼はしないといけないな。とか、全員一致で思ったのだ。
そうして出した結論は…。
【お姫様をたすけよう!!!!】だった。
最初のコメントを投稿しよう!