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『ふう。高原のてっぺんまで来たな!』 『くう!いい山の匂いと風だ!清々しいぜ!』 『ほんと、達成感ありますよね!』 『あっ、スゴい!みんな見てください!眼下の大地が一望出来ますよ!!』 『『『おおっ!!』』』 巨大な巌山の山脈を分けるようにして、縦長に伸びる一本の回廊じみた高原から北側。 黒の魔法使いが左手の指で示した先に、キラキラ輝く人家の屋根の群れがあちこちに固まって見えた。 『ん?勇者よ、結構ひと生き残ってねえか?』 『ですよね。…でもあたし少し違和感があります』 『あれじゃないかな。こっち側の、大陸の南側じゃ普通にある街の高い城壁が全然ないことじゃないかな…』 確かに、白の魔法使いの言うとおりだった。 眼下一面に広がる大陸北側の景色の中に点在する大集落、いや、立派に街と呼んでいい規模の集まり。 にも関わらず、それらの街には外敵から身を守る城壁もなければ、土塁(どるい)も柵もなかった。 どころか、街と街を繋ぐ街道は幅広くよく整備され、田園地帯も整然と区画されて青々とした小麦が風にそよがれ、波打ち、やさしく揺れている。 『おい、勇者よ』 『あの、勇者さん。これって…』 『勇者さん。あんまり云いたくはないんですが…』 『あ、ああ。わかってる…』 なにかがおかしい。 凶悪な魔物は一体どこにいるのだ。 「おおまことじゃ!聖天使さまの光魔法結界が無くなっておるじゃと?!」 「あ、あんたたちはなにものだ!こ、ここになにしに来た!」 坂の下の茂みから、杖をついた老人と若者が数人現れて、震える声で矢継ぎ早に俺たちに質問を浴びせてきた。 『あっと、ですね。俺たちは怪しい者じゃなくてですね…』 『そうそう。ちょいと邪魔な妖樹の森を消しただけでね♪』 『え、えへへ♪悪いのはあの森だからね?』 『です!皆様に危害をつもりはありませんよ♪』 俺たちは怯える村人?たちをなだめようと、ありったけの笑顔で誤解をとこうと必死だった。
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