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私は今年37歳になる。
思えば今までよく生きてこられたものだ。
私以外誰もいない小さなリビングの中央に座り、ぼんやりと宙を見ながら人生を振り返る。
20歳の時にクモ膜下出血で倒れ、25歳の時に信号無視の車に撥ねられ、人生で2度死の淵に立たされたが、私はその度生還し今に至る。
担当したそれぞれの医師は異口同音に「ありえない。奇跡だ」といった。
驚愕というより怪物でもみたかのような顔で。
失礼な。
と、当時は思ったが彼らの反応は至極当然のものだったのだと今は思える。
おそらく2度の臨死体験はそれぞれ死んで当然の致命的なものだったのだ。
しかし私は死ななかった。なぜか。
私は立ち上がり化粧台の前に座り直し引き出しを開け中から小さな木箱を取り出した。
これだ。これのおかげで私は今日まで生きてこられたのだ。
事故の後遺症か25歳からの記憶が朧げな私だが、これを手にした日の事は鮮明に覚えている。
あの日、まだ暑い9月の夕暮れ時。
部活帰りのいつもの道。
私はあのおじさんに出会ったのだ。
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