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____とある街のとある夜。
街の一角に佇む大きな日本家屋。
大きな門を潜れば、玄関までの長い石畳を暖かい光の灯る灯籠が照らす。
その屋敷の一室、畳の上に敷かれた豪華なカーペットに、細部までこだわりぬかれたデザインの和室3部屋分にも及ぶ長いテーブル。加えてテーブルとセットのふかふかの椅子が4つ、十感覚で並べられている。
その大正時代を思わせるような内装の居間に、兄と二人離れた席に私は腰を下ろす。
襖を背に入り口付近に座る私は、
天利 稀華
対角線上に遠くに座る兄は、
天利 嶺臣
黒い清潔感のある髪に整った顔立ちの好青年。兄は私の2つ上の高校2年生、生徒会長。そして室町時代から続く呉服屋、天利家の次期当主。
そんな兄は私の名を呼ばない。だから私も兄の名を呼ばない。
父様も母様も、お手伝いさんたちでさえ…、この家で私の名を呼ぶものは誰もいない。
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