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以来、ぼくは沙由里の家に居候させてもらっている。ぼくは仕事もしていないし、お金だって無一文だ。なんの取り柄もない。けれど、彼女はそれでもいいという。そばにいてくれたらそれでいい、と言ってくれた。
感謝してもしきれない。大好きな沙由里。だからせめて、ぼくのできることをするよ。きみがさみしくないように、必ず家にいて、出迎えてあげる。彼女に寄り添って、きみをいっぱい癒してあげる。だって、きみは、ぼくの大好きな人だから。
そんなわけで、今日もぼくは彼女を玄関で送り出す。
いってらっしゃい、と言うと彼女は、ぼくに微笑を浮かべた。
「じゃ、仕事に行ってくるわね。何かおみやげ買ってくるから」
「え、ほんとに? やったぁ」
ぼくは、嬉しくなって彼女の元へかけ寄った。それから、自慢のしっぽをピンと立てると、にゃーと鳴いてみせた。
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