Capitolo 1 比翼の鳥と焔のお菓子

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「この世界は一度終わった。影の審判と呼ばれる侵略によって。これは裁きの鉄槌だと言っているようだった。」 約100年前に起きたとされる影の審判。お伽話や空想上の存在が攻めてきたと言われている。世界各国が協力し、現れた者達からの都市や人々を守ったとされる人類史上最大最悪の侵略。しかし100年も経てばそんな出来事も歴史の特異点として教科書に載ってしまう。そのぐらい誰も彼もがあの出来事を忘れてしまっている今日この頃。日本の南鳥島のさらに東、影の審判以降になんらかの原因によってできた、本当に小さな島を大きく広げる形でできた人工島(ルーナ・クリアーレ)。その中心付近にそびえ立つ、この島唯一の大図書館を所有する『ルーミティナル学園』。その学園で今日、入学式が行われていた。 「…以上をもって学園長からの式辞といたします。」 どの学校でも学園長の話というものは長いものだ。内心欠伸が出そうなのをなんとか抑えながら、新入生の水瀬颯はそう思った。 「続きまして、本校在校生代表と新入生代表による挨拶です。 在校生代表、2年1組生徒会長、秋雨月奏。新入生代表、1年1組丹川理央。」 その言葉の後、おそらく代表の2人による返事が聞こえた。そして左右の階段から1人ずつ登ってきた。 「全校生徒、起立。礼…着席。」 適当に礼をし、席へと座る。早くおわんねぇかなと思いながら、壇上のいとこを見ながらそう思った。 「厳しい寒さを超え新芽が顔を出し始めたこの頃。このルーミティナル学園は新入生を迎えることができました。学園はあなた方の入学を歓迎します。なにかわからないことがあれば私達に聞いてください。…と本来ならいうべきなのでしょうが、この学園では違います。ご存知かと思いますが、この学園は各学年ごとに校舎が分かれています。なので、違う学年同士会うことはほとんどないでしょう。」 会場がざわめく。入学の時説明されていたのにもかかわらずだ。少し期待でもしていたのだろうか。その期待すらも今打ち砕かれたが。 「そう絶望しないでください。滅多に会うことはないとしても、私達生徒会に遠慮なく相談しにきてください。この学園では、生徒会はそういう立場となります。」 「私達が今日この場で出会えたことは奇跡かもしれない。だからこそこれからの3年間、ここにいるみなさんで力を合わせて行く事をここに宣言します。」 「生徒会は全力で皆さんをサポートする事を宣言します。」
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