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台所の入り口のすぐ脇に二階につながる袋階段があり、階段と玄関の間は応接間兼孝夫の父の敏の部屋になっている。
廊下をはさんでその反対側は座敷になっている。
○ 座敷
ふすまを開けておくと、家の中が全部素通しになって見えるような作り。
康、しきりとあたりを見渡している。
康「…(目をとめる)」
○ 隣の隣の座敷
おばあさん(細川くに・73)が丸めた小さな背中を向けてテレビを見ている。
康が見ていると、突然「ひよーっ」
というような歓声のような声をあげて手を叩く。
○ 座敷
康「何してるの」
孝夫「相撲を見てるんだ」
康「音がしないじゃないか」
孝夫「イヤホンをしてるから」
康「なんで」
孝夫「耳が遠いから。
イヤホン外すとすごい音だよ」
康「なんで手を叩いたんだろう」
孝夫「さあ。
貴ノ花(初代)が勝つといつも叩いているけど」
○ 奥座敷
くにがしているイヤホンから相撲中継の音が漏れている。
○ 座敷
耳をすましている康。
と、階段の方からみしり、みしりと人が降りてくる音がする。
康がそっちの方をふと見ると、また別の大柄なおばあさん(石下ゑば・70)が降りてきたのが見える。
康「(ちょっとびっくりする)」
○ 廊下
から台所に入るゑば。
ゑばの声「良江ちゃん。
ごはんはまだかし」
良江の声「まだおやつの時間よ」
○ 座敷
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