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買い物篭を持った良江が戻ってきてその傍らを通り過ぎようとする。
と、帰ろうとする康と送っていく孝夫にすれ違う。
良江「あら、帰るの?」
康「はい」
良江「夕飯食べて行けばいいのに」
康「帰らないと、晩ごはん母一人だけになっちゃうんです」
良江「ああ、なるほど。
おうちは御所の中だったわね」
康「公務員宿舎です」
良江「青山通りを渡る時は気をつけなさい」
康「おじゃましました」
と、去る。
孝夫、参道の入り口の所まで康を見送る。
康「(突然)君の親父さん、偉いと思うよ」
孝夫「なんだい、いきなり」
康「あふくろを二人も抱えてやっていけるなんて、偉いと思うよ」
孝夫「(よくわからない)そうか?」
康「尊敬するね」
孝夫「本当」
康「俺のおやじなんて、一人でも振り回されてる」
孝夫「ふーん」
康「じゃあ、ね」
と、去る。
○ 細川家・台所
良江、孝夫、ゑば、くにが席についている。
ちょうど食事が終わったところ。
良江、みずやの引き出しから病院からもらった薬の袋を二つ出す。
良江「はい、お薬」
無造作に渡されたまま中身を出すゑば。
良江「それは下のおばあちゃんのよ」
くに「あたしの薬は三つだけど、おばあさん(ゑばのこと)のは二つしかないんだよ」
ゑば「今度三村先生のところに行ったら、新しい薬の二つや三つくれるよ」
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