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孝夫「なんだか、薬の多い方が偉いみたい」
良江「(ゑばに)いいから、下のおばあちゃんの分を渡して」
○ 風呂
孝夫、ホーローびきの湯船に浸かっている。
がらがらっと玄関の引き戸が開く音。
良江の声「お帰りなさい」
敏夫(父)の声「ただいま」
○ 台所
良江「またおばあちゃん薬を間違えたのよ」
敏夫「(着替えながら)ややこしいからなあ」
良江「朝、昼、晩でいちいち全部違うし」
敏夫「考えとくよ」
良江「きょう孝夫の友達が来たのよ。
転校生」
敏夫「そう」
良江「夕飯食べて行ったらって誘ったんだけど、帰っちゃった。
夕飯は家で食べるように言われているって言ってたけど、塾に行くのよ、きっと」
○ 風呂
出ようとしていた孝夫、“塾”の一語が出たのでまた湯船に浸かる。
○ 台所
敏夫「考えすぎじゃないか」
良江「だって、今からだってちっとも早くないんだから」
○ 風呂
孝夫、台所の会話をまぎらわすように窓を開ける。
琴の音が聞こえてくる。
そのまま浸かっている孝夫。
○ 台所
良江「(ふと会話をやめ)孝夫、まだお風呂に入ってるの?」
○ 風呂
良江の声「孝夫っ」
孝夫、急いで出ようとして滑って湯船に頭までどっぷり浸かってしまう。
孝夫「(顔を水から出し)危ねえーっ」
(F・O)
○ 座敷
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