赤坂の八つ墓村(シナリオ・全)

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畳を這っている蟻を眺めている孝夫。 ゑばの声「孝夫さ、孝夫さ」 “さん”と呼ぶべきところを省略されて“さ”になっている。 孝夫「(顔を上げて)何?」 ゑば「(障子を顔の分だけ開いて)ちょっと」 と、招き猫のように孝夫を呼ぶ。 孝夫「何よ」 ○ 奥座敷 ゑばについてくる孝夫。 ゑば「きょうはお休み?」 孝夫「うん。 学校の創立記念日」 ゑば「だったらお使い頼みたいんだけど」 孝夫「いいよ」 ゑば、小銭入れから一つ一つ小銭を出して孝夫に渡す。 ゑば「お釣りはおこずかいだ」 孝夫「ありがと、で、何を買うの」 ○ 一ツ木通り まだ事務所ビルは少なく、個人商店が立ち並んでいる。 歩道も舗装されておらず、二車線だ。 孝夫、歩いている。 ○ 同・肉屋 大きな犬がつながれている。 やってきた孝夫、反対側の歩道に渡って大まわりして通り過ぎる。 ○ 同・酒屋・外 まだ自動販売機はない。 ○ 同・中 孝夫「(入ってきて)赤玉ポートワイン下さい」 店員「(子供が酒を買いにきたのを訝しんで)お父さんが飲むの?」 孝夫「(首を横に振る)」 店員「じゃあお母さん?」 孝夫「(首を横に振る)」 店員「君じゃないだろうね」 孝夫「…お母さんが飲む」 店員「ポートワインね」 と、ワインを取りに行く。     
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