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プロローグ
見渡す限り草原が広がっていた。
遠くには、ぐるりと山並みが連なっている。
まるで、この地を取り囲み、誰の侵入をも許さないかのように。或いは、何者をも外に出さないと決意しているかのように。
燃えるような夕焼けが、山の稜線をくっきりと際立たせている。
世界は、そこで途切れていた。
果たして、ここは楽園なのか──それとも、監獄なのか。
草原の中心で青年は自問し、大きく息を吐いた。
目的地に着いた安堵のためか、これから待ち受ける困難を思っての溜め息なのか、彼自身にも判らない。
彼の周囲には、百人ほどの集団がいた。思い思いの体勢で休んでいる。疲れた表情ではあるが、その目から希望は失われていない。
安全と不自由とは表裏一体。
それは皆、十分に理解しているだろう。
安全を取るのか、自由を選ぶのか?
この地への移住は正しかったのか?
その答えは、今はまだ分からない。
答えが出るまでには、何年も、何十年も、ひょっとすると、何百年も待たなければならないかもしれない。
しかし、ここは遠い旅路の果てに、ようやく辿り着いた新天地。
そう、まさに新天地と呼ぶに相応しい。
もう、彼らは二度と故郷に戻ることはない。
望むと望まざるとに関わらず、この地で生きていくしか、道は無い。
青年は、再び遠い山並みを見つめた。
すでに日は落ちて、夕闇が空と山の境界を曖昧にしていた。
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