第三章 セレモニー

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なんとかワイヤーを(つか)めないだろうか。 このまま空中を彷徨(さまよ)っているわけにはいかない。飲まず食わずでは、(いず)れは餓死してしまう。 それに、重力に(つか)まれば、地上へと墜ちるだろう。 ロープがあれば──。 そうか。 腰からベルトを引き抜いた。 一端を掴んで振り回し、投げ縄の要領で手近なワイヤー目掛けて投げる。 長さが足りず空振りしてしまう。 その反動で体が回転し始めた。 くるくると回り続けて、方向感覚が薄れ、上下も分からなくなった。 意識も朦朧(もうろう)としてきた頃、背後から羽交い締めにされた。 何が起きたのか分からなかった。 誰かに耳元で、動くなと言われたが、そもそも動ける状態ではない。 そのまま上の方に上がっていく。 構造体に向かっているようだ。
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