第四章 ヘブン

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人波は途切れなかった。 思っていたよりも人口は多かったのだろうか。これだけの頭数(あたまかず)があれば、たとえ未開の惑星であっても、開拓し生き延びることが出来るのではないだろうか。そんな期待をしてみる。希望的観測だ。 「その身体は、どのくらい()つのですか?」 私は、ロナルドの胸元を()ながら(たず)ねた。心臓の辺りだ。 「理論上は半永久的に。ただし、実証はされていないので、なんとも。それに、ここを離れるということは、予備の身体(ボディ)もパーソナルデータも全て破棄することになります」 「それでは、もう──」 「事故(アクシデント)で死んでしまえば、それきり──ですね。復活はできません」 中枢機関(ファザーコンピューター)に保存されている住人の記憶は、どうなってしまうのだろうか。 一塊の人格を形成し、生命体として覚醒する。そんな物語を想像してみた。宇宙を漂いながら、やがて何処(いずこ)かで一つの意識体として目覚めるのだ。悪くはない。 私には、未来が視える。 何故なのか。 分からない。 未来は決まっているのではないのか。 その可能性はあるだろう。 そっと目を閉じて思いを馳せる。 草原の中に(たたず)むバンビの姿が見えた。 彼らは新たな文明を作り上げるだろう。 何百年も何千年も、いやもっと永い時間が必要かも知れない。 だが、きっといつか──。
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