第三章 セレモニー

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どうやらロープを手繰(たぐ)り寄せて移動している。 ゆっくりと構造体が近付いてくる。 放射状に伸びたワイヤーの中心に、丸く口が開いていた。ロープの先はその中に続いている。 そのまま、中へと吸い込まれた。 不意に羽交い締めから解放されると、ふわりと身体が浮き上がる。 身体に力は入らず、脚からも力が抜けていたが、幸いなことに無重力なのでくずおれる心配はない。 私をここまで連れてきた者が背後から離れ、旋回(せんかい)するようにして、ゆっくりと視界に入ってきた。 そこでようやく顔を見ることができた。 見知った顔が、そこにあった。 それは町長のロナルドだった。
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