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男は、そんな俺の様子に、大声で笑いだした。その声は、この五日間耳にしていた、あの遠吠えそのものだった。獣はこの男だったのだ。
などと思っていると、白樺の中から一人また一人と、腰巻き一つの男たちが現れた。それぞれが、足元を凝視しながら歩き、時折しゃがみ込んでは草を掻き分けるしぐさをする。目当てのものを見つけた何人かは、草の塊を引きずり、すると、その下から沼地が現れた。自分の沼を見つけた男たちは毛皮を取り去り、沼の中に入っていく。
じっくり時間をかけて、男たちの体は泥の中に沈んでいく。あるいは、膝から下を小刻みに震わせ、泥の中にすばやく滑り込む者もいる。
俺と同じ沼の男は、気づけば腰まで浸かっていた。笑顔で俺に語り掛けているが、何を言っているのか分からない。それでも、何を言わんとしているかぐらいは分かる。俺もまた笑顔でうなずいてみせる。
ふいに、男は傷の刻まれた頬を紅潮させた。全身の筋肉という筋肉が軋みを上げ、次の瞬間、男の下半身は沼から引き抜かれていた。沼から上がった下半身からは、運動した後のように蒸気が上がっている。男は、先程脱いだ毛皮で泥を拭い去ると、その毛皮を再び腰に巻き付けた。
生温かい沼の中で、俺は、図らずも裸の付き合いに巻き込まれたのだった。
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