グリズリーと俺。

暁

分厚い雲に覆われた空から恵みの雨が降っている雨天。
だが、雨天といってもそんじょそこらの雨天とは訳が違う。
空は水墨画のような灰色の雲が濃淡の渦巻きを造っているかのように分厚く空を覆っていて、そんな雨雲から機関銃を発射しているかのような強気な雨達が地面に凄い勢いで吸い寄せられているかのように降り注ぎ、地面で玉砕の雨音を奏でている。
その空を区切るように張られている電線はまるで縄跳びのようにぐるんぐるんと靡いているし、電線自体にも何処から飛んできたのかビニール袋のようなものが取り込み忘れた洗濯物のように引っかかっていて、その後何処かへ飛んでいく気配もない。
電柱の近くに植えられた電柱を追い越すほど背の高い街路樹達も、まるでヘビメタライブの最前列の客みたくヘッドバンキングをしてびゅおびゅおと風に煽られ枝にびっしりと生やした葉っぱをがさがさと煩わしそうに振り乱している。
「非常に勢力の強い台風なんちゃら号が日本列島を横断しています！」と合羽姿で雨に打たれながら大声で天候の危険性を訴えていた小太りで眼鏡をかけた神経質そうなアナウンサーの言葉は昨夜のニュースの中継だった。