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それを思い出して思わずにんまりと一人ほくそ笑んでしまう。「今日はいい天気になりそうだ」と心の中でもにんまりせずには居られなかった。 自分は、今月から「先生」の部屋に住み込みさせて貰ってる大学生で、元々は中高と部活でラグビーに打ち込み、その功績を評価されて、地元じゃラグビーの名門校とされる大学に推薦入学を果たし、大学でもラグビーに全情熱を傾け、顧問にはプロ入りも確実と言われるほどだった。 自分でもラグビーしか脳のない人間だというのは自覚していたし、当然のようにプロ入りを目指し、球を追っかける日々を送っていた。 だけど人生そんな甘くないってことを思い知ることになった。 そこには別に万人を涙させるような感動的なドラマも何もなく、ごくありふれた【故障】が立ちはだかった。 世の中にありふれた話だろう。故障によってドクターストップがかかり、夢のプロラグビー選手の夢は絶たれた。 突然に夢への道を失った後、自分を大学卒業まで支えたのは読書だった。 怪我のせいで短く入院したときに読書に意義を見いだしてから色々な本、色々な文豪の残した名言たちに支えられた。 太宰治、芥川龍之介、中原中也、江戸川乱歩、洋書ならドストエフスキー、星の王子様。     
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