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袖を水で盛大に濡らしてフェイスタオルで顔を拭きながらぱたぱたと先生は自分の横をすり抜けて携帯で会社に電話をしにいった。 先生は介護施設でヘルパーをしている。でもじいちゃんばあちゃんが住んで生活をしてる老人ホームじゃなくて、一時的にあずかるだけのデイケアっていう仕事らしい。細かいことはよく分からないが、今日は台風も来ているし送迎ってのが出来ないらしいので、案の定デイケアはお休みになった。 なるだろうなとは思っていたけれど、一応お弁当もこさえたし朝も同じ時間に起こした。 先生はこの生活軸がずれることが嫌いだ。仕事の日はもちろんそうだし、休みの日は仕事のある日と同じ時間に起きて、休みだと言うことを自覚しつつにんまり二度寝をしたいらしい。後者の方は、なんだかちょっと分かる気がする。 「暁さん。俺部屋で小説書いてくるわ。」 朝ご飯に握ったおにぎりを食べ終え、まだ眠気の残った調子で先生は部屋へとぺたぺた歩き出す。冷え始めたから靴下履いた方が、と伝えたが先生は靴下があまり好きじゃないらしい。今度しまむらでもこもこのあったかスリッパでも買ってこようと思う。 「じゃあ、自分、コーヒー入れますよ。」 「ん。どーも。」 いつもは二度寝が常套なのに、先生がこんな朝から文を綴るなんて珍しい。     
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