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「ではみなさん、移動しましょう」
その一言で、バラバラに散っていた他の参加者たちが軍隊のように二列になった。
隣同士になった他の参加者といっしょに手をつないで、審査員の前に行くらしい。
「………」
私の隣になった子は、首もとだけフリルのついたブラウスにプリーツスカートという、まるでどこかの制服のようなつまらない格好だったけれど、顔がおそろしく綺麗だった。
肩で揺れる髪は艶やかで枝毛一つないし、目の上で切りそろえられた前髪の下では大きな黒目が長いまつげに縁取られている。
横顔がとても綺麗で、そのまま切り取って誰か有名な人が作った彫刻だと言われたら信じてしまいそうだった。
「どこから……来たの?」
私はあまり社交的な方ではない。
だけど、気がついたらその子に声をかけていた。
「山のほう」
外見のイメージ通りに透き通った声だった。
「お母さんと来たの?」
「ひとりで来た」
「本当? すごいね」
「別に。それどころじゃなかったから」
子供が美少女コンテストに参加すること以外に、大事なことなどあるのだろうか。
少なくとも、私の母にはないだろう。
「昨日、妹が咳をしたの」
「咳?」
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