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1章 自由な空と地獄の空
空。
それはカナにとって自由の象徴だった。
どこまでも大きく、どこまでも広く、視界を遮るものなど存在せず、自分を邪魔するもののない全てが思いのままに出来る自由な場所。
そんな空がとても心地よくて、なによりも一番大好きだった。
基地のみんなが教えてくれる空に関する知識は寝るのも忘れて夢中で勉強したし、操縦のテクニックや、機体の機能なども全て完璧に覚えてやってのけた。
運動は苦手な方だったが、体力作りのトレーニングにも真剣に取り組んで、同年代の一般的な子供では到底手に入れられないような身体能力だって手に入れた。
そんな過酷な訓練の続く毎日はやはり辛い事も多かったけれど、空を飛ぶために必要な事だと思えばなんとか頑張れた。
それでも、あまりに辛い訓練で心が折れそうになった時には自分と同い年の4人の仲間達が励まし、支えてくれたおかげで途中で折れたりせずに最後までやり遂げる事が出来た。
辛くも厳しい毎日だったが大好きな空が、大切な仲間達がいたからなんとかやってこられた。
だが、
カナが10歳になる頃には訓練は更に激しさを増し、もう飛びたくないと訴えるカナの主張は聞き入れて貰えず、時には暴力を振るわれて強制的に飛ぶ事を余儀なくされた。
時に血を流し、時に涙を流しながら毎日の訓練に取り組んだ。
自由を奪われ不自由をしいられた。
そんな極限とも言える毎日を送るうちに、カナの空に対する思いは次第に変化していく。
大好きだった自由な空は跡形もなく消え去り、いつしか空は自分を縛り付ける場所でしかなくなっていた。
そんな空に音も気配もなく突如として現れた正体不明。
まばゆい光を放ち、空を超高速で飛び回りカナ達に襲いかかる。
カナ達は必死に逃げたが一人の仲間が撃ち落とされた。
初めて奴等と遭遇したあの日から2年。
幾度となく戦った。
そして先月、カナが14歳になった6月24日。
梅雨時期には珍しい雲ひとつない晴天の空の中、カナにとって最後の仲間だった親友のエリが地に落とされ、カナはついに一人ぼっちになった。
大好きだった青空を黒く塗り潰された、そんな気分だった。
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