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この広い神社の境内には、鳥居。社務所。国中から呼ばれた大人の男たちのいる各部屋や、特別な朱色の間などがある。
修練の間は、後にわかるだろうが、龍神と戦い乙姫を説得する上では必要な場所である。
武たちはこれからどうなるのだろう?
私の知っていることにも限界があるが、武たちがこれから龍神と戦うのはもうすでに決まっているのだろう。
サンサンと照り続ける中庭に、高取がいた。よく掃除された庭で、小鳥が木々の間からさえずって、飛び跳ね、雨に濡れることもなく。まるで、ここだけが別世界のようである。
高取は武を寝かしつけると、何かを考えながらトボトボとここまで一人歩いてきたのだ。巫女姿であるが、胸元からタロットカードを取り出したようである。
「お止めなさいな」
高取は声のした方に、即座に振り返った。
地姫である。
地姫は銀髪の長い髪のとりわけ美しい巫女である。静かな足音で他の巫女を連れ廊下を歩いていたのだ。
丁度、もうすぐ昼餉なので、その道中である。
「何かしてないと、いけない気がしてきたの」
高取はタロットカードを固く握りしめて頭を左右に振っている。
きっと、これからのことで混乱しないようにと占いたいのだろう。
「そんなに心配しなくてもいいのですよ。この先のことは自然に任せましょう。きっと、あの男は大丈夫。修練の間は、確かに龍神と戦う上では必要な場所です。あなたたちにはまだ早いとも思いますし……。でも、武という男はそれらも乗り越える力を得るでしょう」
そう話すと、地姫は連れの巫女たちと共に、再び廊下を歩いて行った。
高取も武に興味を持っているのだろう。あるいは、やはり好意を寄せているのだろう。何かしらの嫉妬を抱いているのだろうか?
違うかも知れないが。
きっと、武にこれ以上邪魔が入らないようにと。
そんな一心で、この先には自分と武の間には障害物は幾つあるのか?
なんとか、障害物を取り除いていかなくてはならない。
などと、武の運命の全てを占ってみたかったのだろう。
だが、これからの武には武運が必要だった。
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