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昼餉の時間には、大広間に武の姿はなかった。
今も朱色の間で寝ているのだ。
時々、うなされているが、わけは後に話そう。
それぞれおおよそ1000人が集まった昼餉の席の一端に、湯築はいた。
なにやら辺りを見回しているが、致し方ないことである。だが、やはり隣の席の高取に聞いたようだ。
「これから、どうなるの?」
高取は黙々と食べながら、少し離れた地姫と蓮姫と鬼姫の方を見つめている。
「今は、巫女たちと一緒にいよう。これからかなり危険だけど、きっと、武がなんとかしてくれるから」
高取は色々と心配気な顔になっているのだが、努めて普通の声音で湯築と話している。さすがと言えるのだが、私も高取もまだ知らないところが多いのだ。
「高取さんは何を知っているの? あるいはどこまで? 稽古って一体なんなの?」
湯築は和食で彩られた昼餉を、ちょいちょいつまんでは、疑問だらけの頭の整理をしたかったのだろう。
「多分、龍神と戦うのよ。これから……」
「え?」
湯築はオーバーに目を回したようだ。
「あんなのと戦うの? 自殺行為じゃなくて?」
「ここは、そういうところ……でも、心配いらないわ。昔から戦っているといわれる存在しない神社なの」
湯築は大きな溜息を吐いて、黙々と食事を平らげていった。
不思議なことが、連続して起きているのだが、湯築も高取もいい勝負である。
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