89人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
「この料理。美味しいわ」
湯築は、これからのことをあまり考えずにしているようだ。あるいは混乱を静めたかったのだろう。黙々と料理に箸を運ぶ。
「ええ。そうね」
対照的に、高取は不安でいっぱいなのだろう。
朱色の間の武はというと。
武は目を覚ましたようである。
夢を見ていたのだ。
悪い夢とまでは、言えないがやはり悪夢に近いのである。
武の夢の中までは、さすがに私も見えないので、あの時のことを話そう。
ここは、日曜日の鳳翼学園の屋上。
轟々と音のする渦潮から龍が昇った。
いや、一体ではない。
四つの龍が昇った。
すでに昇った自衛隊のヘリコプターを噛み砕いた龍は、吹雪の足に噛みついていた。吹雪は気を失ったようである。麻生と卓登は、吹雪を助けるために屋上に留まったようだ。高取は、屋上の入り口の階段付近で、あらかじめ用意しておいた救命具の数を数えていた。
美鈴が悲鳴を上げ、学園内に避難したようだ。
それぞれの龍は新たな獲物を見つけると、嬉々として咆哮を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!