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鬼姫は武の額にいつの間にか浮き出てきた汗を、タオルで拭ってやっていた。それから、高取と湯築の方を見たようだ。
「高取さん。地姫の訓練は、かなり不思議よ……頑張って。それと、湯築さん。蓮姫が呼んでいる」
ここは、修練の間。
社の一端に位置した。周囲を灯籠で灯された薄暗い間である。広い間で、そこに蓮姫が佇んでいた。湯築が畳の上を歩いていると、蓮姫は頷いた。
「いい足ね」
この修練の間には、時間割というか。入る順番を巫女たちが決めていたようだ。今は蓮姫と湯築の番である。
どっしりとした重い空気の間であった。ところどころから身を圧してくる生暖かい空気に、湯築は自然と額に汗が滲んだようである。
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