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「武。どうだった? 鬼姫さんの稽古は?」
湯築は、修練の間から汗だくで出てきた武にすぐさま近づいて聞いてきたのだ。
恐らく心配して、待ってくれていたのであろう。
「ふー、疲れた。鬼姫さんは凄いや……何もしていないのにひどく疲れたよ。そういえば、高取は?」
ここは、廊下である。
二人とも汗を滝のように流している。ここから見ても凄い汗である。
広い廊下で、武と湯築のまわりには夕餉の準備に巫女たちが行き来していた。
「高取さんなら、真っ青な顔で甘いものが欲しいって、ふらふら台所へ行ったわ」
「麻生……きっと……」
ここは朱色の間。
再び寝床についた武である。武は天井を見つめて一人呟いたのだ。
武は恐怖を全く感じていないのではないだろうか?
静まり返った寝床の中で、強い眼差しの武はほくそ笑んでいるのだ。
これならば頼もしい限りである。
それとも周囲の人たちのおかげなのだろうか?
寝床の中で武は、いつまでも天井を見つめていた。
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