龍のアギト

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ここは廊下である。 「武様!」 「武様!」 「武様! 高取さんが! 倒れました!」  あれから修練の間の自分の番まで、木刀を軽く振り続けながら、息を整えている武の元へ。あの三人組が来た。何でも、高取が倒れたようだ。廊下の壁にある掛け時計を見ると、午前の9時である。武たちは午前と午後に二回に分けて修練の間を使っていた。 「鶴は千年亀は万年……私は二十歳」  呑気な声である。  武は声のした方を見たようだ。地姫である。  地姫は何事もなかったかのように、微笑んでいる。その向こう。修練の間から、高取が真っ青な顔をしてフラフラと歩いていた。時折、両手で口を抑えて「うっ」と呻いている。 「高取……大丈夫か? どうしたんだ?」  武は高取を心配しているのだろうが、地姫はニッコリと笑って頷いた。 「大丈夫よ……今は少し無理な修行をしているのです」
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