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それからの武と湯築は、厳しい稽古を鬼姫と蓮姫に申し出たようだ。
鬼姫と蓮姫も二人の気持ちをよくわかっているのだろう。快く承諾したのだろう。
私もおおよそわかるのだが、きっと、武は高取だけに厳しい稽古をさせたくないと思っているのだろう。
気遣いからか負担を掛けたくないとも思っているはず。
はたまた湯築にとってはライバル意識からか。湯築も武も高取の身を案じていた。
きっと、二人はそれぞれの対抗意識と気遣い同時に抱いたのだろう。
それから、三日後である。
厳しい修練の合間の。ここは、大広間の夕餉の席である。
おおよそ1000人の大人の男たちは、皆静か過ぎていた。殺気などを滲みだす者もいる。なぜかしら武たちの厳しい稽古を知っているのかも知れない。
皆、対抗意識で大広間はひしめき合っていた。
そのため、修練の間には昼夜問わず大勢の男女が行き交うようになっていたようだ。
「みんなどうしたんだろ? 燃えていますね」
三人組の美鈴が隣の片岡に向かって、疑問を呈している。
「……うーん。なんでか、武様も必死なのです。武様には絶対敵わないというのに」
片岡は箸を夕餉に運びながら、もぐもぐとしながら話していた。
その隣の武は、意識を取り分け集中しながら箸を運んでいたようだ。恐らく、今も何らかの修練をしているかのようだ。
高取は今日も夕餉の席に着いていない。
私も心配になるほど、やつれていたからだ。
反対に湯築はおかわりを繰り返し、武はいつもより小食を志しているかのようだ。夕餉の食材を少しずつ隣の片岡たち三人組に勧めている。
三人組は殊更に大喜びだった。
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