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「稽古の方は、どう?」
湯築は隣の武に聞いたようである。
「まあまあで、もっと上」
「そう……」
それ以上、武と湯築の会話はぷっつりと消えた。
二人とも更に更にと上を目指しているのだろう。
当然、高取もである。
その時、廊下を隔てた黄金色の松や杉が彩る模様の襖が開いた。
高取である。
「お腹空いた」
武と湯築の顔に緊張が走った。それだけやつれていたのであるが、高取は至って平然としているのだ。
数人の大人の男たちや鬼姫たちも驚いた。
ただし、当然地姫は別である。
武と湯築は、高取の食事の間。何も言わずに料理に箸を運んでいたが、二人とも内心は複雑であろう。
高取だけに負担を掛けたくないと思うと同時に、高取がもっと強くなれるのなら応援しようとも思っているのだろう。
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