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一方、ここは鳳翼学園。
正確には武たちが存在しないはずの神社へ行った後、一週間の時が経った頃である。
あの日曜日から、自衛隊のヘリコプターが救援物資や何かの機材を運ぶために、幾度となく学園と土浦にある陸上自衛隊の基地を行き来していた。
雨の降る窓の外を麻生が独り寂しそうに見つめていた。
きっと、武を想っているのだろう。
心中を察するのは、私もかなり辛いが。
きっと、身が裂けるほどにひどく心配しているのは確かであろう。
「いやー、みんな無事でなにより……というわけじゃないな」
麻生は声のした方をハッとして振り返ったようだ。
偉そうな一人の白衣姿の男が自衛隊の隊長に苦い顔を向けて話したのだ。その白衣の男は宮本博士である。他の研究員も自衛隊になにやら機材を運ぶよう指示をだしていた。
「怪我人は、訓練所の病室へ全員無事に運んだんだね? 後は雨と地球外生命体の龍だけか……」
「宮本博士。いつか、この雨が止むことはありますか?」
自衛隊の隊長は若く。立派な体躯である。
「わからん……恐らくは無理だろう……」
「あの、宮本博士。機材はこれで全部です」
かなり細いと形容できる研究員が宮本博士に言ったのだ。
一つの教室である2年D組は、今や立派な研究施設と変わりない。
麻生が何やらさっきから聞き耳を立てていた。
そんなことをしても、私にとってはあまり意味がないのだが……。
「数人の学生たちは、今のところ行方不明だ……」
宮本博士はぼそりと呟いた。
そこで、宮本博士は葉巻を取り出した。
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