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「学生たちは、目下全力で捜索中です。龍がいるので、この近辺しか行けませんが。5機の小型潜水艦と3機のヘリで捜索をしています。宮本博士…あの龍はいったい何でありますか?」
「龍か……この学園へと幾度も来ているのは……何故だろう……か? 念の為にこれからも学生たちを探してくれたまえ。恐らく手遅れにはならないはずだが……」
薄暗い廊下である。
田嶋の顔は、時折岩のように固い厳しい顔になる。
何故だろう? もうすでに、学園の人々は助からないとでもいうのだろうか?
「あの龍には弾丸が堅い鱗があって貫通しにくいんで困っていました。ですが、宮本博士の言う通り。そこは催涙弾が有効でした」
「……ああ、やはり生物なのでな」
「正直、それでもいつまで持つか……わからないのが現状です。残念です……」
なるほど、龍の脅威が迫っているのか。
私にはどうしようもない。
宮本博士は麻生の方を見ていた。
田嶋はきっと現状を嘆いているような顔だろうが、私は麻生と宮本博士を見る。
宮本博士は、さっきから麻生を気にかけていたのだろう。
「あの嬢ちゃんの身内……酷い怪我だってね。何か明るいニュースでもあればな……」
「命には別状はないですが。……明るいニュースですか? ないので正直歯がゆいです……」
「龍の脅威さえなければ、雨の原因を解析したから……なんとかなるだろうか……?」
「宮本博士はこの雨の原因を知っているのですか?」
「ああ……」
宮本博士はあらぬ方を向いた。
ここは学園の二階である。
一階まではすでに浸水しはじめ三階は瓦礫と化した屋上によって人々の住めるところは皆無だった。
「もって、後一週間くらいか……」
宮本博士は他の研究員たちに、早めに機材を使えるようにと指示を出し、麻生の元へと歩いて行った。
ぽたぽたと降る雨は、未だ振り続けているのだ。
このままでは……。
「お嬢さん。さっきの会話はどうか内密に……」
「はい……」
麻生はそう言うと、自分の教室へと歩いて行った。
心なしかその後ろ姿は、何かを決心したかのようだった。
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