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武は踏み込みから、バランスを失った鬼姫の首筋に寸止めで、木刀を押し当てていたのだ。
これには鬼姫もたまらず小さな悲鳴を上げた。
「お……お見事です……武様」
鬼姫は真っ赤な顔になって、やっとそう言った。
その直後、鬼姫は武に口付けをしていた。
無意識のうちだったのだろう。
致し方ない。
武は口を鬼姫から離し、ニッコリと微笑んでいる。
「ごめん……俺には……」
「はっ! 申し訳ありません!」
鬼姫は慌てて武から距離を取った。けれど、頬を染めながら、武に「お慕いしております」と言葉を残し、修練の間から走り去ってしまった。
サンサンとした太陽がまぶしい庭で、鬼姫は一人。頭から湯気がでそうなほどの熱を額にだして佇んでいた。
「はあっ……武様は……地姫の言う通りの方だった」
実は、地姫は鬼姫だけに武がいずれ世界を救うであろうと教えていたのである。武の前世はやはりである。だが、証明は誰もできないのだ。
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