いざ、旅立ちの日

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 一方、鳳翼学園では不思議なことが起こっていた。  それと同時に麻生と卓登が何やら動きだしたようだ。  いつの間にか雨が止んでいるのだ。  雨が止み、五体の龍が空を見上げていた。  鳳翼学園の二階の宮本博士と田嶋の前に一人の巫女が現れていた。 「やったー! 雨が止んでくれた! 今よ!」 「そんなの無理だよー!」  麻生は不思議と雨が止んでいるのを確認してから、廊下を一直線に走り出す。  当然、学園の二階に集まっていた五体の龍が気がつき、大口を開け、廊下の窓ガラスを割って麻生に食らいついてきた。  けれども、麻生の足はなんと湯築と同じくらいの速さだった。  なんなく麻生は逃げおおせ、廊下の窓から教室側へと突っ込んだ五体の龍の顎に、卓登があらかじめ廊下の教室側に用意した四本の足を鋭利に削った椅子や机などを、ロープを使って一斉に横に倒した。  グサっという音と共に、五体の龍がアギト……そう、顎に椅子や机の足が深く突き刺さった。  血を流した龍が、たまらずそれぞれ逃げ帰って行ったようだ。  麻生たちから目を離し、学園の外を見てみると、五体の龍が渦潮に引き返していった。  雨も止み。弱点も知られ、もう龍の脅威も雨の脅威も何もない。  武はこれで、安心して旅に出られるだろう。  でも、何故。雨が止むことが起きたのであろうか?  あの巫女は一体? おお、一つわかった。恐らく麻生は武があの日曜日の屋上で、龍の顎に正拳突きで血を流させていたので、龍の顎が弱点だとわかったのだろう。    
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