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「高取。今までどんな凄い修行をしていたんだ?」
あれほどの対抗意識を辺りにまき散らしていた張本人に武は、どうしても聞きたかったのだろう。
「え? ただ座っているだけだった」
あっけらかんと言われ、武は目を丸くしたようだ。
「後は弓の修行しかしなかったわ」
高取と武と湯築は大船を見上げては、しばらく話していた。
ここは存在しないはずの神社の海に面した紅い橋の上である。湯築も修練の間で蓮姫を驚かせるほどの腕を見せて、皆無事に竜宮城を目指すことになった。
武たちの目の前の大海原に、山の方の空から大船が幾つもザブンザブンと着水してきた。
「どの船に私たちは乗るのかしらね?」
武の隣の湯築は髪をかき上げながら誰にともなく聞いていた。
「ああ、あの船よ」
高取が素っ気なく不思議な力を使って、数多の中から一隻の船を指差した。
「高取さん。鬼姫さんたちも一緒の船に乗るのかしら?」
「ええ、そう。私たちの船だけ最強ね」
武と高取。そして、湯築はサンサンと降る日差しの中で、しばらくは見ることができない太陽を見上げていた。
そういえば、あの三人組はどの船に乗るのだろう?
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