復讐の幕開け

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ーーーーーー 太った男から受けた暴行の傷は時間をかけてゆっくりと回復していった。 「…治った。」 「…ヴァンってほんと傷の治りが早ぇよな。オレだったら回復にもう数十分かかると思うんだけど。」 「投入されてる薬との相性が良いんだと思うよ。あとは気合い…かな。」 「何だよそれ。」 「ふふっ。」 密かに笑うカトルにフェムは呆れていた。 「さっ、今日はもう遅い…明日に備えて早く寝ないと。じゃあね。」 「おう。」 「おやすみ。」 「寝坊すんじゃねぇぞー。」 軽く手を振ると、カトルはそのまま寝室へ入っていった。 「じゃ、オレも寝るわ。」 「おう。」 「おやすみ。」 「おやすみー。」 そういってフェムも寝室へ入った。 「みんな寝ちゃったし…ボク達も、もう部屋に居た方がいいかな。」 「…そうだな。」 ペートとヴァンも顔を見合わせ寝室へと向かう。 寝室は一部屋八人で使っており、カトルとフェムはペート達とは部屋が分かれていた。 「…ねぇ、ヴァン。明日の作戦の事なんだけど…。」 「…?」 歩みを進めながら、ペートは神妙な顔つきでヴァンを見た。 「……もし、…もし少しでも身の危険を感じたら戦ってもいいと思う。逃げたっていいと思う…から…」 「…どうした?」 「え?」 「えらく弱気だな。これくらいいつもやってるだろ?」 「そ、そうなんだけどさ…」 落ち着かない様子のペートをヴァンは首を傾げながら見つめる。 「何か嫌な予感がするんだよね……、カトルの作戦だから大丈夫だとは思うんだけど……いつもの奴らとは格が違うというか…。 カトルはああ言ってたけど…もしもの時のために他の誰かもう1人…いた方がいいんじゃないかなって思って…。 何なら…ぼ、僕も一緒に…」 ペートは指をいじりながら俯きがちに言葉を紡いだ。 「俺は大丈夫だ。命令されたことはちゃんとやり遂げる。」 ヴァンがいつもの様に淡々とした口調で答えると、ペートは少し寂しそうに「…そうだよね。」と呟いた。 「あ、いつの間にか部屋についてたみたい。」 扉を開けると、周りのものを起こさぬよう、2人は静かに床に着いた。 「明日は僕らもサポートするし…頑張ろうね、ヴァン。」 「…おう。」 「おやすみ。」 「…おやすみ。」 ーーーーーーーーーーー ドラセナ家 婚約パーティー潜入 黄金指輪作戦 開始。
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