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心地の良い小鳥のさえずりが聞こえる。
「………。」
少女が薄ら目を開くと、カーテンの隙間から日が差し込んでいた。
「あら…もう朝なの?」
開いたままの本がいくつも散らばるベッドの上。
ぐっと背伸びをすると、小さな欠伸をひとつ、それからゆっくりと地に足をつけた。
すると、ドアの外から2回程ノックの音がした。
「ティオ嬢、おはようございます。ノインですが…もうお目覚めでしょうか?」
「…っ!ええ、起きてるわ!」
少女-ティオは慌ててクローゼットから簡易なドレスを取り出し着替えた。
さっと身支度を済ませると、勢いよく扉を開く。
すると、目の前に現れたのは背の高い青年-ノインだった。
「おはよう、ノイン。」
「おはようございます、お嬢様。朝食の準備は整っておりますが…直ぐにお召し上がりになりますか?」
「そうねー、お腹ぺこぺこだもの。」
「……でしょうね。」
ノインが腕時計を一瞥する。
短い針は9と10の間を指していた。
「昨晩は夜更かしでもなさっていたのですか?」
「へへっ…まあちょっとねー。」
照れくさそうに頭をかくティオをノインは呆れた表情で見つめた。
「他の方々は皆、食事を済ませ、豪遊街へ買い物に出かけられましたよ。」
「あらそう。」
「お嬢様も後で向かわれますか?」
「いいわ。興味無いし…それに私あそこ嫌いだもの。」
「……そうですか。」
「ノインはもう食べたの?」
「…ええ。」
「ちぇー、1人で食べないといけないのー?」
口をとがらせ不服そうに腕を組む。
「お食事の間、話の相手くらいはして差し上げますよ。」
「やったね♪ついでに私の苦手なものがあったら食べて?」
「それはお断りします。」
「えー…とかいって食べてくれるもんね、ノインは。」
無邪気に笑うと、ティオは嬉しそうに鼻歌を歌いながら歩き始めた。
スキップをしながら、廊下を歩く侍女たちに笑顔で挨拶をして回る。
ノインはやれやれとため息をつきつつも、密かに顔を綻ばせた。
「ティオ様はいつも愛らしいわね。」
「本当に。私たち従者の光だわ。」
廊下の端で窓の掃除をしていた2人の使用人のコソコソ話がノインの耳に入る。
「ねぇ。ところで聞いた?あの意地悪なお姉様達のお話…」
「ええ。また示し合わせてティオ様を除け者にしてたんでしょ?」
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