ドラセナ家の憂鬱

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ー婚約パーティー当日 「ねぇ、やっぱり琥珀色の方が良かったかしら…何か地味じゃない?これ。」 「そんな事ないわ、ノーリ姉さん。一面のパールがまるで星空のようで綺麗だわ~。」 煌びやかな青いドレスを着たノーリと真っ赤な薔薇色のドレスを着た女が互いのドレスをヒラヒラとさせながら笑い合っている。 「楽しみねー。ドヴァー兄様のお嫁さん、とっても綺麗な方だそうよ。」 「そりゃそうでしょ、トリー。絵に描いたようなドブスなんていくらお金持ちだって願い下げ!義理の姉なんて認めないわ。」 「そうよねぇ~。…ちょっと、お前、喉が乾いたわ。ワインを持ってきて。」 トリーは近くにいた薄汚い服を身にまとった少女に命令する。 少女は俯いたまま何も話さなかった。 苛立った様子のノーリは、少女の右肩を強く押した。その反動で少女は尻餅をつく。 「お前よお前!小汚い猫みたいな顔して何ぼさっとしているの!」 「…ご、ごめんなさい…!」 「早く持ってきてちょうだい。」 「はい!」 少女は慌てて給仕室へ走っていった。 「ったく…これだから使えない奴は嫌だわ。」 「ご、ごめんなさいね、姉さん。私の躾がなってなかったから…。」 「…そうね。トリー、アンタはまだ甘いのよ。もっと痛めつけないといつまで経っても役に立たないのばっかになるわ。」 ノーリがトリーを睨みつけると、トリーは冷や汗を流した。 「まあいいわ。そのうち奴隷の使い方も慣れてくるでしょ。」 「…もっと頑張るわ。」 胸の前に拳を握り決意をあらわにするトリーを横目にノーリはニヤリと笑った。 「おお、おお、綺麗にめかし込んでいるな。」 「「お父様!」」 二人は背後からこちらへ近寄るドラセナ家の主人の元へ駆けて行った。 「ドヴァーも準備出来たそうだ。皆も早く会場に向かいなさい。……おや、ティオはいないのか?」 「知らないわ。」 「まだ部屋でドレスでも選んでるんじゃない?あの子、全然買い物に着いてこないからお古でボロボロのばっかりだと思うけどー。」 ノーリとトリーは互いに顔を見合わせニヤニヤ笑っていた。 主人は困ったような表情で首を傾げた。 「うーむ。そうか…それは可哀想なことをしたな。今すぐにでも仕立て屋に頼んで持ってきてもらおうかね?」 「そんなことしなくていいわよ、父様。」 「そうそう、買いに行かないあの子が悪いんだから。それに今更言った所でパーティーには間に合わないわよ。」 「うーむ……そうかのぉ…。」 「そんなことより早く兄様の所へ行きましょ!」 「うんうん!お嫁さんの顔も見てみたいし、ティオは後で呼んでくるから、ね。」 「…そうだな。じゃあ先に行っていようか。」 主人の両腕に掴まり、2人は足早にこの場を去ろうとした。 すると、命令通りワインを持って帰ってきた少女と出くわした。 それを見た主人は一転、憤怒の表情を浮かべる。 「なんだお前!ワインを盗む気か!」 「いや…ちが…」 「何だ、誰かに命令されたのか?!」 少女は焦った様子でノーリとトリーを交互に見回した。 ノーリは答えようと口を開いたトリーを押さえつける。 そして、一瞬だけ口角を上げると、少女を軽蔑するような眼差しを浮かべた。 「まあ!奴隷の分際でワインを盗もうだなんて厚かましい! 」 その言葉にトリーも少女も目を丸くした。 「違うわ!あたし…命令されて…」 「まあ、誰がそんな命令を?…まさか、私たちに罪を擦り付けようとしているの?」 ノーリは目を潤ませ、今にも泣き出しそうな表情になった。 少女はその様を酷く怯えながら見ていた。 そして、持っていたワインボトルを落としてしまった。 「あら、床が汚れてしまったじゃない。盗みの罪もあるし、これはお仕置きが必要ね。」 ノーリは目を細めると、黄金指輪の付いた手を少女に軽く差し出した。 「ぃゃ、やめてっ!…っぐ!」 少女が突然首元を押さえ苦しそうに倒れ込んだ。 首にはあの銀色の首輪がはめられていた。 ノーリは上がる口角を密かに隠しながら笑っていた。 数秒すると、少女は気絶してしまったのかそのまま動かなくなった。 「さて、そろそろ行きましょ、父様。」 「そうだな。」 少女をまるで汚物を見るかのような目付きで見下した後、3人はそのままその場を去っていった。
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