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その日の夜、俺達はいつもの場所で穴を掘っていた。
木の棒が無数に刺さる地面。
その少し離れたところを深く深く掘り進める。
「ぅ、…うう…」
1人の少年がスコップを持ったまま泣き出してしまった。
「…ペート…泣くなよ。」
「…だってフェム……っ、…また、仲間が…」
ペートは垂れた鼻水と涙を拭い、溢れだしそうな感情を必死に抑えこもうとしていた。
フェムもグッと唇を噛み締め、怒りを押し留めている。
その横で2人の少年が淡々と掘り進め、ある程度深さが増したところで、先程の黒い袋を穴へと入れた。
袋を全て入れ終えると、そのうちの1人は静かにため息をついた。
「…何ていうか、慣れてきちゃったね、この作業も。ねぇ、ヴァン。」
「……そうだな、カトル。」
「これだけ死んでも、また新たな奴隷が増えるんだから不思議な世界だよ、ほんと。
一体どこでこんなに沢山の子供たちを攫ってきてるんだか……、まあ、貧乏な家なら子を売る親だっているだろうし、貧困層の住む路地裏に行けばいくらでも捨て子はいるだろうね。」
話を聞いているのかいないのか定かではないが、ヴァンはただ淡々と土を運び、黒い袋を埋めていた。
「…まあ、君には関係ない…か。」
カトルは呟くように言葉を放つと、埋める作業へ加わわり、土を緩やかな山積みにする。
そして、少し離れた場所にいるペート達へ視線を送った。
「ペート、少しは落ち着いた?」
「……うん……もう大丈夫…」
「そう。」
微かに微笑むと、カトルは近くに落ちていた太い木の棒を手に取り、山の頂点に差し込んだ。
4人はその墓の前に並んで静かに手を合せる。
そして、ゆっくりと目を開き、施設へと足を向けた。
ヴァンは墓を見つめたままじっと止まっていた。
その様子に気付いたカトルは声をかける。
「…どうしたの?」
「なあ、カトル。俺もいつかはここに埋められる日が来んのかな。」
「………。」
カトルはにっこりと微笑む。
「ヴァンは大丈夫だと思うよ。だって強いから。」
「…そうか?」
「うん。羨ましい。」
「何で?」
「僕は弱いからさ。」
「…ふーん。」
返事をすると、ヴァンは何事も無かったかのように歩き始めた。
(この世界を当たり前のように過ごしてきた君以上に強い人間は、ここにはいないよ…ヴァン。だから…君には協力してもらわないと。僕の復讐に。)
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