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「そんなの…あるわけねぇだろ。」
ひっそりと呟くように言葉を放つフェムに3人は顔を向ける。
「俺達が今まで過ごしてきた中でアイツらを殺せるような状況があったか?もし逃げ出せるタイミングがあったとしても俺らは無力だ。武器もなんもねぇ。拳で殺ろうにもアイツらは四六時中弾丸ぶっぱなせるんだぜ?襲いかかろうもんなら1発であの世行き。生活に耐えきれなくって立ち向かっていった奴らの末路を今まで何度も見てきただろ?」
「……あれはただの馬鹿だ。タイミングも見図らず闇雲に突っ込めばああなることくらい誰にでも分かる。アイツらは死にたかったんだろうよ。」
「っ!カトルてめぇ…!」
「や、やめなよ…」
「邪魔すんなペート!」
フェムは乱暴に立ち上がるとカトルの胸倉を掴んだ。
引き離そうとするペートを片手で薙ぎ払い、カトルを睨みつけた。
「死にたかった訳あるかよ…。あいつらは一日一日を必死に生きてたんだ!生きたかったんだよ!けどよ、こんなゴミクズみてぇな人生送ってりゃ、そりゃ神経がおかしくなるだろ。俺は…あいつらは正常な判断をしたと思うぞ。ここから出たくて必死に戦った…それが普通の人間だからな!」
「……普通の人間、か。」
地面に座ったまま、ヴァンはフェムを見上げ呟くように言葉を発する。
「ここから死んでも逃げ出したいって思えるのが普通の人間なら、俺たちは普通じゃねぇの?」
「…それは…」
「……それは違う。」
カトルは戸惑う表情を見せるフェムの手を引き離し、少し距離をあけた。
「僕達はこの世界に順応した、逆に死んでいった者たちは順応出来なかった。ただそれだけ。
どちらにとっても自分の従った道が正しいんだ。だから、ヴァン。俺たちは普通だよ。」
「…ふーん。」
カトルが微笑むと、ヴァンは興味無さそうに呟いた。
「それで、本題に戻るけど… 。
アイツらを殺れるような絶好の機会があるって言ったら、君たちは乗る?」
「……要はここから脱出できる手立てがあるってことだよな?カトル。」
「そうさ。」
「…僕、乗ろうかな…。」
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