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ペートは遠慮がちに答える。
「そりゃオレだってそんな方法が本当にあるなら乗るさ。」
フェムは不満げに口を尖らし、カトルを見た。
すると、カトルは得意げな顔をする。
「次の任務、ドラセナ家の婚約パーティーへ潜入の後、皇族の権力の象徴とも言われる"黄金指輪"を偽物とすり替え持ち帰る。って言うのが目的だろ?
それを利用するのさ。」
「利用っつってもどうすんのさ?」
「使うのさ、指輪を。」
「……は?」
イマイチ話を読み込めず、フェムは首を傾げた。
「あの指輪には奴隷の首輪を無効化する力がある。」
「え?!」
「カトル、それ本当か?!」
「ああ。貴族以上の金持ちに与えられた特権…とでも言っておこうか。恐らくあの指輪には特別な力があると思う。」
「……何でそんなこと知ってんの?」
驚きの表情を見せるフェムとペートとは違い、ヴァンは落ち着いた様子でカトルに視線を送る。
ヴァンを一瞥すると、カトルはゆっくり目を閉じた。
「僕は昔、貴族の家で飼われてた。」
「飼われてた…って…」
「首輪を無効化する力があるってんなら、貴族の家には奴隷制度みたいなのがねぇんじゃねえの?」
「いや、……その逆。」
ペートとフェムは疑問符を浮かべ、カトルを見つめる。
「指輪がある以上絶対的無敵、誰もが恐れる存在、欲しいものは何もかも全て手に入れられる…それが貴族共さ。
あいつらは僕達を遊びに使うペットぐらいにしか思ってない…ヒトの姿をした悪魔だ。」
再び開いたカトルの瞳は憎悪に満ち溢れていた。
その姿があまりにもおぞましく、3人の背筋が凍る。
「ま、だから指輪さえ手に入れられればこっちのもの。ここからも容易に抜け出せるってわけ。」
「…なるほどな。」
ヴァンが呟くと、先程とは打って変わって、カトルはにっこりとした表情を見せた。
「ただ…そうはいっても生半可な覚悟じゃ当然指輪を手に入れるなんて不可能。
警備は厳重、普通に突っ込めばすぐ殺されるよ。普通のヒトなら、ね。」
「……オレたちならギリ耐えれるってか?」
「…うん、まあ、そうだね。」
怪訝気な表情で尋ねるフェムにカトルは微笑み答える。
「今、任務に合わせて最適な作戦を考えてる。この計画を成功させるには僕の指揮力、仲間同士の結束力…それと、後はヴァン。君の活躍にかかってる。」
「……俺の?」
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