復讐の幕開け

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「そうさ。」 ヴァンが不可解な面持ちを浮かべるも、カトルは自信満々に頷く。 (ヴァンは僕らとは違う。この地獄のような日々が彼にとっての全て。僕は、ここに来てからずっと君のことを見てきたけど、君にはまるで感情がないみたい。喜楽の感情、怒の感情はもちろんのこと…恐怖や絶望、悲しみといった、外の世界から来た者達が最も苦しめられている感情に振り回されているのを見たことがない。それらの感情は全て己の欲。幸せだった頃の記憶が現状を拒絶する。けれど、ヴァン、君にはそれがないだろう。それ故に他人に揺さぶられることがない。君には弱点がないんだよ。だから君は…) 「君は強い。ここにいる誰よりも…外の世界にいる誰よりも。」 「……。」 「そうだぜ、ヴァン。お前の仕事っぷりを傍で見てきたオレから見てもお前は最強だぜ!」 「…ヴァンの実行力は確かにすごいよね。…時々、あまりにも無茶し過ぎて不安になるけど…」 目を輝かせるフェムとは対照的な表情でペートは目を伏せた。 「確かに。僕の目から見ても少し度が過ぎていると思うことも多々ある。今回の件では、あまりに目立ち過ぎると身に危険が及ぶ可能性が高くなる。あくまでも穏便に…暴走するのはダメだよ、ヴァン。」 「…おう。」 「何か不服そうな表情だね?」 「…いや不服ていうか、何ていうか…限度ってのがわかんねぇ。」 「限度?」 カトルが首を傾げると、ヴァンは頭をかきながら3人を見た。 「いつもは何も言われてないから…ただ適当に殺れるだけ殺ってるだけ。命令があればそれ通りにするよ。」 「命令…か。」 カトルは口元を押さえ、考え込む素振りを見せる。 「じゃあヴァン、君は今回絶対に戦っちゃダメ。」 「…?」 「はぁ!?そりゃ一体どういうことだよカトル。」 「…この任務はとにかく指輪を取って帰ることが最優先。騒ぎを起こさずに帰れるのが最善。だから僕らの中で最も機動力に長けているヴァンに指輪を取ってきてもらうことが最善策だと考える。僕らが玉で行っても足でまといになるだけさ。」 「…なるほどな。」 「…まるでヴァンだけに行かせるみたいな口振りだね。」 ペートが怪訝そうにカトルを見ると、彼はにこりと微笑んだ。 「僕ははじめからそのつもりだよ。」 「そんな…!無茶だよ!」 「大丈夫だよね、ヴァン。」 「…ああ。」 ヴァンはただ淡々と返事をした。
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