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 仕事中、大半は誰かと作業している。漫画の制作を手伝ってくれる、アシスタントと言う人達が主だ。あとは、担当者と過ごすことも多い。  週始めに担当者と打ち合わせし、週末までアシスタントと共に漫画を制作する。終了時間は進み具合により変動し、時には徹夜もあった。  そんなサイクルを、唯々繰り返していた。  だから、こんなにも羽根を伸ばせるのは久方ぶりなのだ。指示する必要も、急かされる不安もない。  そう、睡眠だって好き放題出来て──。  再び、白い世界で目覚めて数十秒、この空間の現実に気付いてしまった。  満足いくまで眠れることについては、最高の幸福だと言えるだろう。  しかし、しかしだ。他にすることがない。  そう、物一つ存在しない空間では、時間を潰す方法がなかった。他者がいなければ、会話に花を咲かすことさえ出来ない。  身一つで可能な遊びも考えてみたが、全く思い付かなかった。漫画ばかり描いていた、ツケが回ってきたのかもしれない。    悲しいことに、このタイミングで空腹まで感じ始めた。
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