現実男に妄想

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  「あと、三分で電車が来るよ。急いで急いで」 「オジサン、ありがと。いってきます」  時間が分かってたら、一生懸命走ったらいい。だから、お母さんの無駄口より。オジサンの方が、何倍も助かるよ。  結芽、足だけには自信があるしね。駅前に出ると、駅の階段を上がって改札前まで来た。 「えっ、なんで?」  自動改札が何個か故障しているみたいで、その前に渋滞が起きてる。これじゃ、電車に乗れないよ。今、来てる電車を逃したら、間違いなく遅刻だよ。 「ちょっと、ごめんなさい」  無理矢理、前に出ようとした。 「姉ちゃん、割り込もうとしてんじゃねえよ。順番だ順番」 「ごめんなさい、でも遅刻しちゃうから。急いでるんです」 「急いでるのは、みんな一緒だ。割り込みするんじゃねぇ」  前に出れなくなった。そうだよね。急いでるのは、みんな一緒だよ。もう、間に合わないかもって諦めかけた。
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