現実男に妄想

19/25

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
   一緒に帰れるなら、全然いいよ。帰りにも、手を繋げるもんね。  今日の授業は、全然頭に入らなかった。普段から集中して、授業を受けてる訳じゃない。だけど、そんなんじゃなく。何限に、何の授業を受けたかも分かんないくらい。  幸せな時って、何にも耳に入らないんだねぇ。  授業が終わって、正門の前に行くと、まだ先輩は来ていなかった。 「先輩、どうしちゃったんだろ」  ちょっとして、先輩が校舎から走って出てきた。そんなに待ってないから、急がずにゆっくり来てくれて良いのに。ちょっと汗をかいて、一生懸命な感じはかっこいいな。 「ゴメン、さぁ帰ろうか」  先輩はそう言って、結芽の右手を握って駅の方へと歩き出した。 「あれっ」 「んっ、どうしたの結芽ちゃん。学校に、何か忘れ物でもした?」 「あっ、いえ……何でもないです」  先輩の手…… 冷たい。それに、鉄棒みたいに細くて固いよ。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加