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一緒に帰れるなら、全然いいよ。帰りにも、手を繋げるもんね。
今日の授業は、全然頭に入らなかった。普段から集中して、授業を受けてる訳じゃない。だけど、そんなんじゃなく。何限に、何の授業を受けたかも分かんないくらい。
幸せな時って、何にも耳に入らないんだねぇ。
授業が終わって、正門の前に行くと、まだ先輩は来ていなかった。
「先輩、どうしちゃったんだろ」
ちょっとして、先輩が校舎から走って出てきた。そんなに待ってないから、急がずにゆっくり来てくれて良いのに。ちょっと汗をかいて、一生懸命な感じはかっこいいな。
「ゴメン、さぁ帰ろうか」
先輩はそう言って、結芽の右手を握って駅の方へと歩き出した。
「あれっ」
「んっ、どうしたの結芽ちゃん。学校に、何か忘れ物でもした?」
「あっ、いえ……何でもないです」
先輩の手…… 冷たい。それに、鉄棒みたいに細くて固いよ。
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